今日は実にすがすがしく久々に気持ちの良い朝を迎えた。
空は青く澄みわたり朝からお日様をまぶしく感じる日である。
午前5時、近所の神社にお参りを済ませ、いつものように会社に向かう。
会社のドアを開けるなり、愛人、おっと間違えた愛犬のタラとホシノに熱烈歓迎を受ける。
本人、いや本犬達は別に熱烈歓迎しているつもりはもうとうないのであろう。
その証拠にドアを開けるまでは、甘えた声でふぅーん、ふぅーんと猫なで声でいや、これはなんと言うのだろう犬なで声とでもしておこう。
その犬なで声をだしていたかと思ったら、ドアーを開けた瞬間に外へまっしぐら。
無理も無い、一晩中事務所を守ってトイレを我慢しているわけだから、飼い主に甘える暇も無いのである。
一通りの儀式を終えサッパリした顔で二匹仲良く返ってくる。
次は私の出番である。
スコップ片手に、そのありかを探す。
大体は同じ場所であるから、さほど面倒ではないが、たまに見つけかねることもある。
その見つけられなかったものが、思いもよらぬところにあったりするから大変なのだ。
それは、一昨年の出来事であった。 (もう、時効かな?)
私共の展示場には多種多様なるお客様がお見えになる。
東京町の言葉で話すお客様から、八戸弁を話すお客様、更にはざい語を話すお客様まで、中にはけちだけをつけられれて、お帰りになるお客様まで・・・。
某月某日(小雨)
白の軽トラックが展示場の中をものすごい勢いで入ってきた。
場内にいたお客様もあわてて自分の子供をたぐり寄せびっくりした表情で、いったいなにやつといった雰囲気で見守っていた。
そのトラックから降りた容姿からして、いかにもといった感がある。
白足袋にセッタ履き、真っ白なポッカニッカ、青光りした頭・・・。
肩で風をきりこちらに向かってくる。
当社社員が接待に・・・。 固唾を呑んで見守る数組のお客様と私・・・。
お兄さん : 「こりゃ、何ぼよ!」 (これはいくらだ!)
社員 : 「ハイ、○○円です」
お兄さん : 「だぁして、たっげぇ、たっげぇ」 (翻訳不可・相槌のようなもの) (高い、高い)
社員 : 「材質がWRCですから・・・・」
お兄さん : 「したたたて、木だべせ、木ぁ腐るべせ」 (しかし、木だろう、木はくさるだろう) 等々さんざん難癖をつける。
何を言っても理解してくれないお兄さんに、困り果てた様子の社員。
とにかく、早く帰ってもらいたいの一心である。
他のお客様もその気持ちは同じである。
しばらくそのやり取りを、お客様も見て見ぬふりしながら、見ていた。
互いのやり取りが続くが一向にらちがあかない様子。
そろそろ私の出番である。
傘を片手に 「どうかしましたか?お客様」 とさりげなく声をかける私。
お兄さん : 「たげばりたがくて、一っも良いのネェ」 (高いだけ高くて一つも良い物が無い) と、また難癖をつけ始めた。
私もあきれてしまい、ふと下の方をみて、はっとした。
まさに心臓の止まる思いだ。
うむっ、ぁっ、お兄さんの後ろにタラのでかい、うん○が・・・
あっーっと、思う間もなく (ぐちゅ)
とっさに、私は持っていた傘で自分の顔をかくした。
そして、吹き出してしまったのである。
回りのお客様も、みんな後ろを向いて笑いをこらえている。
通常であれば、このことは大変失礼な事であることは確かだが、今回だけは、ご来店のお客様も、充分理解してくれたご様子。
そのお兄さん、なかなかの人物?らしく、ばつ悪そうに、苦笑いをしながら
「ここいらぁ、のら犬おおがべせっ」 (ここいらは、野良犬が多いんだろう)
と、一言・・・。
白足袋に、うっすらと、タラの思い出を残し、静かに去ったのである。
さすが、忠犬タラである。
そのような危機をあらかじめ予測し、いつもとは違う場所に・・・。
でも、本当は心の優しいお兄さんだったんでしょうね。 きっと・・・。